第五話 〜秘密〜


「ふぅ、どぉってことなかったな。」

案外あっけないもんだったな。

「お、やっと呼べたか。」

待ちくたびれたように時猿が言った。

「あぁ、じゃあ紹介するよ、こっちが斥華。」

そういって、俺は右手に現れた赤いほうの剣を見せた。

「で、こっちは、引蓮。」

今度は、反対側つまり左手に出てきたほうの青い剣を見せた。

「えっ!もしかして、その剣一本づつに意思があるんですか?」

時猿の隣にいたルナはずいぶん驚いたようだ。一本づつに意思があるのがそんなに変なことなのだろうか?

「うん、そうだけど・・・それがどうかしたのか?」

「はい、えっと、ソウルドライヴは本人の潜在能力っていいましたよね?」

「うん、俺はそう聞いたけど・・・」

「人の魂、と言うか心は一つでしょ?」

何、当然のことを言ってるんだろう?

「あぁ、そうだな、普通は。」

まれに二重人格ってのもいるみたいだけどさ、たとえば涼子とか。

「で、潜在能力、つまりソウルドライヴは、その人の心に生まれたときから、宿っている守護霊を具現化させたものなんです。

ここまではわかりますか?」

「あぁ、大体は、な。」

ルナもだんだん落ち着いてきていた。

「で、その守護霊って言うのは、一つの心につき一つしか宿れないんですよ。」

「あぁ、だから二つ宿ってる俺はおかしい、ってことか。」

「はい、そう言うことです。後、よろしければどちらかに聞いていただけませんか?」

ルナの説明に、俺は驚かなかった。

こっちに来てから驚くことが多すぎたからだ。

でも、頼まれたし、俺自身もちょっと興味があったので

「あぁ。聞いてみる」

と言って、俺は目をつぶった。

『おい、斥華』

『ん?何?』

(なんか返事がだるそうだな。)

『そらそうよ、寝てたんだから』

『また勝手に心読んでるし、つーか寝るのはええな』

『別にいいでしょ、で、何の用?』

『なあ、何でお前ら二人なんだ?』

『二人って何が?』

『だからさっきの話し聞いてなかったのか?』

『聞いてるわけないでしょ、寝てたんだもん。』

「はぁー。」

思わずため息が出る。

(肝心なところは聞いてないんだなー)

『しょうがないでしょー、寝てるのに聞こえてたら怖いわよ』

『ってことは、引蓮って奴は何にも聞いてないって事か・・・』

『まぁそういうことね。』

「はぁー」

『で、用件は何なの?』

とりあえず俺はルナに言われたことを話した。

『あぁ、その事ね、今はまだ教えられないわ。』

『え?なんでだよ。』

じらされると余計気になる。

『まあそのときになったら教えるわ。あ、後、言うの忘れてたけど、持ってるのしんどくなったら、

 『消えろ斥華』って言ったら消えるわよ。ついでに、引蓮のほうも一緒だから。』

『あぁ、わかった。』

「消えろ斥華、引蓮」

そう言うと、双剣は2つとも、跡形もなく消えた。

「何か、わかりましたか?」

「いや、“秘密”だとさ。」

「そうですか。」

そう言ったルナの顔は、お預けを食らった子供のようにしょんぼりしていた。

「まぁ、わかったら教えてやるさ。」

そう優しく言った俺に、

「はい!」

と、今度は満面の笑みで答えた。

ホント、子供みたいだな。

「じゃあ、俺は疲れたし寝るわ。」

「あ、はい、わかりました。おやすみなさい。」

「うん、おやすみ。」

こうして、異世界アルシラートでの1日目が、静かに終わった・・・

第一章 完


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