第十一話〜二人の能力〜


      「はぁはぁ、無茶苦茶だろこれ。」

特訓開始2時間後、きれいな芝生の生えた地面に倒れていた。

『そりゃそうよ、私達を使おうと思ったら、このぐらいしないと』

「これぐらいって。」

疲れすぎて声を出していることを忘れている。

「そりゃあいくら何でも、二時間ぶっ通しで国の回り走り回ったら、普通倒れるっつうの。」

『普通じゃ困るのよ普通じゃ。』

「どーゆー事だよ。」

まだかつぜつがはっきりしない。

『あんたは普通の人と違って2つも使うのよ。

普通に考えたら人の二倍の体力がいるでしょうが。』

「そりゃそうだな。」

それにしてもいつもより疲れる気がする。

『そうよ、ただでさえ私達SSクラスの能力なのに。』

SS?なんのことだろう?

『なあSSクラスって何だ?』

『あ、そういえばまだ言ってなかったわね、引蓮、面倒だからあんたが説明しなさい。』

『人使い荒いなぁ』

『なんか言った?』

『い、いえなんにも言ってません。』

『そう、じゃあいいわ、あたしは寝るはね。』

『はい、お休み無さーい。』

30秒後、

『寝たか?』

こっちからじゃ見えないからな。

『はい、ぐっすり寝てますよ。』

『そうか・・・お前も災難だな・・・』

『はい。』

『お互いがんばろうか。』

『はい。』

『よし、じゃぁ説明してくれ。』

『そうですねー、まぁわかりやすく言うところの、S・Dの格付けみたいなもんですね。』

『そうか、で、SSってのはどのくらいの強さなんだ?』

『15段階の一番下がJランクで一番上がSSSです。』

『ってことは何か?お前ら二人とも上から2番目のランクなのか?』

驚きだな、人は見かけによらないって言葉の模範だな。

『はい、そうです。』

こいつが言うのだから嘘ではないのでろう。

『で、どんな能力なんだ?』

『えっと、実はさっきの訓練のとき使ってたんですけど・・・』

『だから何の能力なんだ?』

じらされるのは嫌いだ、イライラする。

『えっと、俺が引力で斥華が斥力です』

『!!!』

ありえない、そんな能力強すぎる。人をつぶしたり、破裂させたり、何でもできる。

足が震えた。自分がそんな能力を持ってしまったことが恐ろしかった。

『ずいぶん驚いたようですね。』

『そりゃ決まってるだろ!こんな怖い能力持ったら誰でも驚くし怖いさ。』

少なくとも俺はそうだ。

『よかった。』

引蓮は確かにそういった。

『よかったって、何がだよ!』

よくない、ぜんぜんよくないじゃないか。

『もしあなたがこの能力を悪用しようとしていたら、私たちは手を貸さないつもりでした。

 でもやっぱり私たちの目は正しかった。大丈夫です、あなたがその気持ちを持ち続ければ、人を殺すことはありませんよ。』

心底安心したように引蓮が言った。

『そう、か。そうだな、そうしないようにトレーニングしないとな。』

そうだ、俺が気をつければ何も怖い能力じゃないんだ。

『そうですよ、ですからがんばりましょう。』

『そうだな、あ、後気になったんだが、訓練のとき使ってた、ってどう使ってたんだ?』

『・・・』

引蓮は言うか言わないか悩んでいるようだった。

『おい、引蓮、怒らんから早く言え。』

ってこれじゃまるで、教師と生徒だな・・・

『えっと、ですねぇ、マスターに余分に引力かけときました。』

『ってことは何か?俺が余分に疲れたのはお前の所為だと?』

『はい、で、でもやれっていったのは斥華さんですよ。』

「はぁーやっぱか・・・」

あまりに予想通りの答えについ声が出てしまった。

『はい、でも、斥華さんには言わないで下さい、マスターのためにやったんですから。』

まぁそうなんだろうな。

『あぁ、言わないでおくよ。』

『じゃ、気を取り直して走りましょっか。』

『あぁ。』

その後走った俺の足取りは、さっきよりも重かった。

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