第八話〜街までの雑談〜
「あのさ〜、まだ街に着かないわけ?」
もういい加減ついていいだろ。
歩き始めて3時間だぞ、3時間。
「えぇ、まだ半分ですけど?」
「はぁー。まだ半分か・・・」
今日3回目のため息。いい加減疲れた。
いや、確かに今までの道のりは結構楽しかった。色々説明もしてもらった。
見たことの無いような木や花や動物も見た。
でもさすがに、3時間は無理だ・・・
それでも、孔児と涼子は元気だ。
何で平気なんだよ・・・
『じゃあ退屈しのぎになんかやる?3人で。』
『三人?俺とお前だけだろ、しかもお前人じゃないじゃん。』
『あんた何言ってんのよ、忘れてない?』
『ん?何をだ?』
なんか忘れてたことあったけ?
『やっぱあんた引蓮忘れてるでしょ。』
『あ!あぁ、忘れてた。だってあいつ喋ったことないし・・・』
『それはあんたの所為なんでけどね。』
『?俺の所為?』
ん?俺なんかやったか?
『あんた、ドラゴンと戦ってるときにあいつの力全部解放してたでしょ?』
『え?いや、あれは糞猿の魔法の所為で・・・』
『まあどっちにしろ、その所為で疲れて寝ちゃってんのよ。』
『あ、そうなんだ。』
そりゃ悪い事したな。
『ホントそうですよ。』
『!?』
頭の中で男の声がした。ってことは。
『あぁ、お前が引蓮か・・・知らなかったとはいえ悪かったな。』
『まぁいいですよ。気にしないで下さい、“マスター”。』
『ま、ますたぁ?』
『はい、僕たちの宿り主なんですからそう言うのが普通でしょ?』
『ま、まぁそうかもしれないけど。』
『じゃあこれでいいですよね?』
『ああ。』
こうして俺のこの異世界での妙な知り合いリストに4つ目の名前が載ったわけだ・・・
『妙って言わないで下さいよ、マスター。』
「はぁー」
そしてこの世界初めての朝から合計“4”回目のため息をついた。
前のページ 次のページ